日本では毎年1,000件を超える林野火災が発生していますが、その多くは数ヘクタール未満で鎮火しています。一方で、気象条件や地形が重なると、100ヘクタールを超える大規模な林野火災に発展することがあります。
本記事では、平成以降に発生した主な大規模林野火災の事例を年代順に整理しました。それぞれの事例から、林野火災がいつ・どこで・どのような条件で起こりうるのか、共通する傾向を読み取っていただければと思います。なお、各事例の発生地・焼損面積などのデータは、総務省消防庁の消防白書や各自治体の公式発表に基づいています。
林野火災の規模を理解するため、焼損面積の目安を以下に示します。
2017年5月8日、岩手県釜石市平田地区で発生した山林火災は、強風と乾燥した気象条件下で延焼が拡大し、焼損面積は約413ヘクタールに達しました。当時、平成期に発生した単独の林野火災としては国内最大級で、翌日に栗原市でも大規模火災が発生し、東北地方の脆弱性が浮き彫りになりました。
北海道オホーツク海側の雄武町で発生した林野火災。融雪後の春先に乾燥が進み、強風と重なって延焼が拡大しました。北海道は積雪で冬季のリスクは低いものの、融雪後の春に急速な乾燥が起こりやすく、林野火災への注意が必要な時期があることを示す事例です。
2021年2月、栃木県足利市の両崖山で発生した林野火災。約3週間にわたって延焼が続き、ハイカーで賑わう人気の登山道周辺が広く焼損しました。冬の北西季節風(からっ風)が強く吹く北関東内陸部の典型的な乾燥地で発生した事例で、出火原因は人為的なものとされています。
2022年2月、福岡県北九州市の山林で発生した大規模林野火災。九州地方も冬から春にかけて降水量が少なく乾燥しやすい時期があり、太平洋側・瀬戸内海側を問わず大規模火災が発生しうることを示しています。
福島県郡山市の山林で発生した林野火災。福島県中通り地方は冬から春にかけて降水量が少なく、乾燥した北西風が吹く日が多いため、林野火災が拡大しやすい気象条件が整いやすい地域です。
長野県茅野市の山林で発生した林野火災。長野県は内陸性気候で冬から春の降水量が少なく、八ヶ岳山麓の落葉樹林・人工林を含む広範囲の森林資源を抱えています。標高の高い山岳地帯での消火活動は難航するケースが多くなります。
広島県の瀬戸内海に浮かぶ島・江田島市で発生した大規模林野火災。瀬戸内海地域は年間降水量が少なく、冬季の乾燥が著しい地域として知られます。離島での林野火災は外部からの応援が制限されやすく、消火活動の難度が高くなります。
岩手県沿岸部の宮古市で発生した林野火災。三陸沿岸は太平洋側気候で冬から春の降水量が少なく、内陸の北上山地から吹き降りる乾いた西風が延焼を助長する地形条件を持っています。翌2025年・2026年に同じ三陸沿岸で大船渡・大槌の大規模火災が連続発生する前兆ともいえる事例でした。
2025年2月26日、岩手県大船渡市の三陸町綾里・赤崎町合足地区などで発生した林野火災。鎮火宣言まで約41日を要し、焼損面積は平成期以降の単独林野火災として国内最大級の約2,900ヘクタール(市の面積の約9%に相当)に達しました。発生時は乾燥注意報・強風注意報が同時に発令されており、本サイトの判定基準では「高リスク」に該当する気象条件下での発生でした。1万人規模の住民避難が長期化し、地域社会への影響が極めて大きい事例となりました。
愛媛県今治市の山林で発生した林野火災。瀬戸内海気候の典型として年間降水量が少なく、乾燥した3月に強風と重なって延焼が拡大しました。発生当日夕方の焼損面積は約25ヘクタールでしたが、翌日朝には119ヘクタール、午後には145ヘクタールと急速に拡大し、最終的に約442ヘクタールに達しました。1,000世帯を超える住民への避難指示が発令され、自衛隊の災害派遣も要請されました。
2026年4月22日13時53分頃、岩手県大槌町の小鎚地区および吉里吉里地区で発生した林野火災。乾燥と強風により延焼が急速に拡大し、最大1,558世帯3,257人に避難指示が発令されました。建物8棟が全焼し、軽症者2人の被害が報告されています。同地域は前年(2025年)に近隣の大船渡市で大規模火災を経験しており、三陸沿岸の春先の乾燥・強風がいかに林野火災のリスクを高めるかを改めて示した事例となりました。4月30日に全地区の避難指示が解除されました。
上記の事例を俯瞰すると、いくつかの共通点が浮かび上がります。
「山火事 乾燥チェッカー」では、観測点ごとの降水量と乾燥注意報・強風注意報の発令状況を組み合わせて、リスク判定を行っています。上記事例の多くで、本サイトの判定基準では「中リスク」または「高リスク」に該当する気象条件下で発生したと考えられます。
過去の事例から学べる最も重要なことは、林野火災は決して特定の地域だけの問題ではなく、降水量が少なく強風が吹く時期には全国どこでも起こりうるということです。お住まいの地域や訪問先の地域でリスクが高まっている際には、火気の取り扱いに最大の注意を払いましょう。
出典・参考:
総務省消防庁「令和6年版 消防白書 - 林野火災の現況と最近の動向」(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r6/chapter1/section4/para1/68064.html)
総務省消防庁「令和4年版 消防白書 - 林野火災の現況と最近の動向」(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/chapter1/section4/para1/10401.html)
総務省消防庁「令和元年版 消防白書 - 林野火災の現況と最近の動向」(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r1/chapter1/section4/para1/47707.html)
Wikipedia「大船渡市山林火災」(https://ja.wikipedia.org/wiki/大船渡市山林火災)
Wikipedia「今治市林野火災」(https://ja.wikipedia.org/wiki/今治市林野火災)
Wikipedia「大槌町山林火災」(https://ja.wikipedia.org/wiki/大槌町山林火災)
釜石市山林火災(2017年):日本災害情報学会 第36巻4号 学術論文「2017年東北山林火災における岩手県釜石市・宮城県栗原市の被害概要」
最終更新日: 2026年5月2日