夏の風物詩である花火大会や、家庭で楽しむおもちゃ花火。これらは火薬を使った娯楽である以上、林野火災のリスクとは切っても切れない関係にあります。実際、林野火災警報や林野火災注意報が発令されている地域では、花火(煙火)の使用が法律や条例によって制限される場合があります。
本記事では、花火大会の主催者の方や、家族で花火を楽しもうとする一般の方が知っておくべき、林野火災と煙火(花火)に関する規制について整理します。
本記事で「煙火(えんか)」と呼ぶのは、花火大会で打ち上げられる業務用の打揚花火・スターマイン・仕掛花火などを指します。火薬類取締法では、これらは「がん具煙火」(おもちゃ花火)と区別して扱われ、消費(使用)には「煙火消費許可」が必要です。
一方、家庭用のおもちゃ花火(手持ち花火・噴出花火・線香花火など)は火薬類取締法施行規則の規格に適合した「がん具煙火」で、購入者が自由に使用できます。
本記事では、両者を含めて「花火」と総称し、用途別の規制について解説します。
花火大会など業務用の煙火を消費する場合、火薬類取締法第25条に基づき、各都道府県知事の許可を得る必要があります。許可申請の段階で、消費場所・消費数量・消費方法・安全対策などが審査されます。
火薬類取締法施行規則および各自治体の指針には、煙火の消費中に「強風その他の天候上の原因により危険な状況になるおそれがある場合は、消費を中止しなければならない」との趣旨の規定があります。具体的には以下のような場合に主催者は中止を判断します。
こうした判断は、主催者・煙火打揚従事者(保安主任者)・所轄消防本部・警察などの協議によって行われます。
市町村長は、火災予防条例に基づき、林野火災のリスクが高い気象条件のときに「林野火災警報」または「林野火災注意報」を発令することができます。発令基準は自治体ごとに異なりますが、代表的な例として東京消防庁の運用基準では以下のようになっています。
| 区分 | 気象条件(代表例) | 違反時の罰則 |
|---|---|---|
| 林野火災警報 | 強風注意報が発表され、かつ、過去3日間の降水量1mm以下・過去30日間30mm以下、または乾燥注意報発表中 | 30万円以下の罰金または拘留(火災予防条例違反) |
| 林野火災注意報 | 過去3日間1mm以下・過去30日間30mm以下、または乾燥注意報発表中(強風注意報は不要) | 努力義務(罰則なし) |
重要:林野火災警報発令中は、屋外での花火(家庭用のおもちゃ花火を含む)の使用は条例違反となり、30万円以下の罰金または拘留の対象になりえます。「ちょっとなら大丈夫」と軽く見ず、警報発令時は花火を控えるべきです。
林野火災警報・注意報発令中、自治体の火災予防条例で規制される代表的な行為は以下の通りです。
「裸火を使用し、火の粉が周囲に飛ぶ行為」が広く制限対象であるため、おもちゃ花火であっても屋外での使用は対象になります。なお、どんど焼きなどの伝統行事についても、火の粉が飛散する場合は規制対象に含まれます。
大規模な花火大会では、主催者が以下のような気象条件を総合的に判断して中止・延期を決定します。
近年、夏の悪天候で中止になった花火大会を「秋〜冬に振替開催」する動きがありましたが、実は秋冬の時期には別の問題があります。それは「冬の乾燥期は林野火災のリスクが高まる」ということです。
11月以降は降水量が減少し、北西の季節風が強まるため、林野火災警報が発令される頻度が増えます。せっかく振替日を設定しても、当日の気象条件次第では再び中止せざるを得ない事態が起こりえます。これが、花火大会が一般的に夏(梅雨明け〜お盆前後)に集中する一因でもあります。
家族で花火をする前のチェックリスト:
多くのキャンプ場では、林野(山林)に隣接または林野内に立地しているため、花火を全面禁止または特定の場所・時間帯のみ許可している場合があります。施設の規則を確認するとともに、林野火災注意報・警報の発令状況を確認しておきましょう。
住宅街や公園では、自治体の条例で「公衆に危害を及ぼすおそれのある場所での花火」を禁止している場合があります。また、騒音・煙・ゴミの問題から地域のルールが設けられていることもあります。事前に自治体や公園管理者の規則を確認しましょう。
「山火事 乾燥チェッカー」では、お住まいの地域や訪問予定の地域における乾燥注意報・強風注意報の発令状況と、直近の降水量から林野火災リスクを判定しています。当サイトの判定で「中リスク」または「高リスク」と表示される場合、その地域では林野火災注意報・警報が発令される条件に近いか、すでに発令されている可能性があります。
花火大会の主催者の方も、家族で花火を楽しむ一般の方も、当サイトを参考情報の一つとしてご活用いただき、火気使用の判断材料としていただければ幸いです。
ただし、当サイトの判定はあくまで気象データを基にした参考情報であり、林野火災警報・注意報の正式な発令状況を示すものではありません。実際に花火を使用する際は、必ずお住まいの市区町村・所轄消防本部の公式情報をご確認ください。
出典・参考:
火薬類取締法(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000149)
火薬類取締法施行規則(https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000400088)
東京消防庁「林野火災警報等の運用開始について」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/kouhyou/portal/fire_warning01.html)
総務省消防庁「林野火災への備え」(https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/rinyakasai/sonae.html)
地方自治研究機構「山林火災・林野火災の予防に関する条例」(https://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/132_forest_fire.htm)
公益社団法人日本煙火協会「花火大会開催の手引き」
最終更新日: 2026年5月2日